長期優良住宅や低炭素住宅など、現代の家づくりにおいてエネルギー効率を考えることは必要不可欠です。ただし、世の中で省エネを謳っていながら実際はその効果に疑問が残ったり、家を建てる人にとっての経済的なメリットがあまり感じられないものがあったりするのも事実です。そうした省エネにまつわる注意点と本当の意味で省エネにつながる家づくりについて考えてみたいと思います。

太陽光発電は疑問の残る省エネ対策

省エネ対策の例に挙げられる太陽光。「地球にやさしいエコなエネルギーでランニングコストも抑えられる」と聞くと、耳なじみは良いですが実情はかなり異なります。まずはエコなエネルギーと言いながら、太陽光パネルを造るプロセスでは多くの化石燃料を必要とします。また、自分で作った電気を自分で消費するには蓄電池の性能が不十分という課題も残ります。しかも、太陽光発電は発電量が当然天候に大きく左右されますが、実は郡山市は全国的に見ても年間の日照量が多い地域ではなく、ただでさえ太陽光発電現状では熱交換率も十分ではないことを考えると、イニシャルコストを上回るだけのランニングコストの削減は難しいのが現状です。

ガス・石油・オール電化の議論も間違い!?

また、省エネ住宅を議論する際にあげられるのが月々の光熱費で「ガス・石油・オール電化」のどれがお得になるのかという問題。これも答えは「どれも得にはならない」!です。実は日本の天然ガスの相場は世界基準に比べてかなり高く、なんと10倍ほどに設定されています。一方、石油も純度の高い油はプラスチック製品や樹脂製品に回され燃料とされるのはあまり純度が高くないものなのが現実です。一見、地球にやさしいイメージがあるオール電化だって、発電するためには燃料としての石油や石炭は不可欠です。実際、それぞれの料金を比較してもそう大きな差は見られません。

省エネ住宅を知るには家が何にエネルギーを使っているかを知るかが重要

では、省エネ住宅というのは光熱費の削減にはつながらないのでしょうか。答えはNOです!省エネ対策をしっかりすることで光熱費を7割近く抑えることだって可能なのです。そのために正しく理解しなければならないのが、家は何にエネルギーを使っているかということ。そしてそれは「暖房」「給湯」「家電・照明」の3つの要素に大半が集約されています。つまり、これらにかかるエネルギーを抑える家づくりをすることが、省エネ対策につながるということです。

「暖房」にかかるエネルギーを抑えるには住宅性能を高めること

まずは最もエネルギーを消費している「暖房」の対策について考えてみましょう。暖房は寒冷の東北地方では4割ものエネルギーを消費する分野です。年間で冷房をしようしている期間と暖房を使用している期間を比べてみればうなずける方も多いのではないでしょうか。最も効果がある対策は家の断熱・遮熱性能を高めることです。工法で性能を高めることができるだけでなく、立地に合わせて窓の位置や風を採りやすい窓の形を考える、軒を深くする、などその方法は多彩です。自然派志向の方なら換気だけでエネルギーの負荷をかけないパッシブ工法がいいでしょうし、技術的に特化したり設備を搭載したりするのもいいでしょう。昔の人の生活の知恵であるすだれも日差しを和らげるのには十分効果があることが分かっています。大事なのは住宅性能を高めながら暮らしに合わせた対策を取り入れることだと思います。

三者三様で異なる給湯システムの特徴

暖房の次にエネルギー消費が多いのが「給湯」には、主に空気中の熱を利用し電気で給湯するエコキュート、ガス、灯油の3つの方法があります。エコキュートはもちろん優れた機能があり、100の電気から300ものエネルギーを生み出すほど効率性に優れ、非常時に貯めておける点もメリットです。その反面、放熱してしまい利用できないエネルギーが多い点や、外気温が低いとその効率は下がってしまいその性能が十分に発揮ない点が課題(北限地は南東北とも言われています)です。当然、夏に比べると冬の電気代は高くなってしまいます。また、製品寿命は長いのですが、その分初期費用に関してはガスや灯油に比べるとかかってしまいます。ガス給湯器は燃料の無駄な消費が少ない点や初期投資がリーズナブルなメリットがある一方で、燃焼を繰り返すことによる消耗が早い点がデメリットとしてあげられます。最後に石油給湯器は寒冷地で多く使われているのが特徴で放熱の割合は最も少ないのも長所です。ただし、燃料切れに注意が必要だったり、製品の定期的なメンテナンスも必要です。それぞれにメリット・デメリットがあるのでこれは一概にどれが省エネかというのは難しいかもしれませんね。

省エネ対策になる家電とならない家電がある

最後の省エネ対策として挙げたいのが「家電・照明」です。一見、家づくりの話とは関係ないように感じるかもしれませんが、家電や照明の省エネ対策によっても光熱費が2割以上も抑えられるので甘く見ることはできません。ここでのポイントは省エネに効果的な家電とそうでない家電があるということ。特に365日24時間常に稼働している冷蔵庫は最新のものとそうでないものとでは、光熱費が全然違ってきます。今の冷蔵庫は驚異的に低ワットのものを出てきているので、買い替えても5.6年で回収できるはずです。他にも常に通電しているウォシュレットや格段に省エネ性能が上がったLED照明などは省エネ対策におすすめの家電です。一方、高額な割に、使用する期間が夏場と冬場に限定されるエアコンは意外にもあまり省エネ効果は期待できないと思います。

やったつもりではなく本当に役立つ省エネ住宅を

家を建てた後のランニングコストをどれだけ下げられるかは、これから家づくりを考えている人にとっても大きな関心ごとだと思います。やったつもりの省エネ対策ではなく、本当に地球環境にプラスに働く省エネ対策や毎月の光熱費を抑えるための省エネ対策につながるように、正しく理解することが大事なのではないでしょうか。そのお手伝いができるよう、ライフスタイルや立地環境を踏まえた省エネ住宅を提案したいと考えています。